Dr. Yuzuru Anzai has compiled information on COVID-19 and its effects on pregnant women.
Dr. Anzai is a past president of JMSA. He is an attending at Lenox Hill Hospital and President, New York Midtown OBGYN
コロナウィルスの感染と妊娠
今、世界中で大流行しているコロナウィルスによって起こされる COVID-19 ですが、妊 娠に与える影響については、非常に限られた報告しかありません。その乏しい情報に基 づいてですが、アメリカと中国のガイドラインについて書いてみます。
1 妊娠はコロナウィルス感染のリスクファクターになるのか?
妊娠中は、特定の免疫系の働きが弱くなり、インフルエンザ、水疱瘡といったウィルス性の感染にかかりやすく、また、重症になりやすい傾向があります。SARS, MERS と いった他のコロナウィルスも、妊産婦がかかると重篤になる事が多いことから、先日、 アメリカの産婦人科学会は、「臨床的なデータに基づいたものではない。」と但し書き をつけながら、上記を鑑みて、「妊娠中の女性は COVID-19 に関して、ハイリスクグル ープとして認識されるべきである。」との見解を示しています。
しかしながら、現在、文献としては中国からの2つしかなく、全部で 18 人の症例が 報告されています。、そのひとつは 13 人の妊婦さんを含んでいますが、妊娠中に COVID-19 と診断されたこの人たちは、3人は軽快して、妊娠を継続、後の 10 人はすべ て、帝王切開にての出産に至っています。ICU での治療が必要となったのは一人だけ で、あとの 12 人は比較的軽い症状で済んでいます。重症となったのは 1/13(7.6%)で あり、COVID-19 患者全体の5%がICU 入院が必要となった事と比べてあまり差がなく、 妊娠中の女性の予後が悪いとは言えないというのが結論となっています。さらに細かく 書くと、6 人は32−36 週の早産、1 人は死産という結果でした。こうして細かく見て いくと、やはりリスクは高いように見えます。
ニューヨークでの43症例をまとめたコロンビア大学の報告が4月8日にオンラインで発表され、これによると 86%が軽症、9.3%が重症、4.7%が ICU の入院が必要でし た。このグループは、無症状の妊婦さんたちも含んでいるので、単純に比較するのは難 しいとしながら、(他のレポートは、呼吸器系や、発熱等の症状があった患者さんたち のデータで、無症状の人のスクリーニングは通常含まれていません。)これまでのデー タとあまり大きな差はない、したがって、妊婦さんが特別リスクが高いとは言えないと の結論でした。しかしながら、妊婦の年令の若さ、男性の方が女性よりも重症になるこ とが多いことなども考慮すると、COVID-19 患者全体のデータよりも、同年令の妊娠し ていない女性のグループのと比較した方が適当かもしれません。
この症例群は、妊娠後半期の女性たちで、初期に感染したら、流産や、胎児奇形のリスクが増えるのかという点については全くわかっていません。
2 胎児、新生児への感染は?
先に書きました報告の 18 例については(死産も含めて)、新生児には感染はありませんでした。この事から、妊娠中に胎盤を通しての感染はないというのがこれまでの結 論でした。しかし、3月26日付で中国の Dr. Zeng のグループは JAMA Pediatrics に、 9%(33 人の新生児中 3 人)に出生直後に COVID-19 と考えられる肺炎が認められたと 報告しています。幸い、症状は軽く、一番重症な新生児もおそらくは早産による合併症 の可能性の方がウィルス性肺炎よりも高いと記しています。またこの3例は全て帝王切 開で生まれています。先のコロンビア大学の論文では、43 人中 18 人が出産に至ったの ですが、17 人の新生児は陰性、一人だけはっきりしない結果で”陽性扱い”ですが、無 症状、コロナウィルスによる肺炎を起こした新生児はいませんでした。
では、出産後の新生児は、母親と一緒にいられるのかですが、母乳にウィルスが検出 された事はないようです。しかしながら、母親が Active な感染を持っている場合、やはりうつるリスクがあるので、中国では、2週間母親から離すようにすすめています。アメリカは、母乳のメリットも考えて、一概に母子を引き離すのはどうかという姿勢で、 患者さんとよく話し合って決めるべきだとの姿勢です。
この様に、新しい病気ですので、非常にデータは限られています。もっと材料が揃ってくると、ガイドラインも変更になると思います。妊婦さんが感染のハイリスクといっても、手洗いをよくする、近距離での人との接触を避ける、密閉された場所に何人も集まらないといった、一般的な注意事項に気をつける以外には、妊婦さん向けの特別な指示というのはありません。
参考文献
Liang H, Acharya G Novel corona virus disease (COVID-19) in pregnancy: What clinical recommendations to follow? Acta Obstet Gynecol Scand.
Yangli Liu , Haihong Chen , Kejing Tang , Yubiao Guo , Clinical mani-festations and outcome of SARS-CoV-2 infection during pregnancy, Journal of Infection (2020), doi: https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.02.028
ACOG Clinical Guidance: Practice Advisory Novel Coronavirus 2019 (COVID-19)
CDC Coronavirus 2019 (COVID-19) Pregnancy and Breastfeeding